入試問題研究①【ナトリウム硫黄電池】
こんにちは、化学マスターです。
今回は,最近注目の大型蓄電池のナトリウム硫黄電池(NAS電池)を紹介したいと思います。リチウムイオン電池とは異なり,NAS電池はレアメタルを使われていないため,今後再生可能エネルギーで発電した電気の蓄電先として注目されています。現在は大型の据え置き型として実用されていますが,高温に維持する必要があるなど、まだまだ改善の必要があります。
それでは早速見てみましょう!
【NAS電池】
充電可能な大電力貯蔵用の電池としてナトリウム硫黄電池(NAS電池)がある。ナトリウム硫黄電池の概略図は下図のとおりである。図のように電池の活物質として,液体のナトリウム(Na極)と液体の硫黄(S極)を高温で用いており,両極の間には固体電解質があり,ナトリウムイオンを通す働きがある。
ナトリウム硫黄電池の放電•充電は次の(1)式で表される。
2Na + xS ⇆ Na2Sx( x = 2~5 )…(1)
放電時には,ナトリウムがイオン化し,ナトリウムイオンがS極で多硫化物イオンと結合し,多硫化ナトリウムが生じる。多硫化物イオンとは硫黄原子がいくつか結合した2価のイオンでSx2-( x = 2~5 )で表されるものである。逆に,充電時には,多硫化ナトリウムが分解しナトリウムが元に戻る。したがって,放電時の電子の流れる向きは図の矢印の向きになる。
問1 放電時のNa極の反応を電子を含むイオン反応式で表せ。
<答え>
ナトリウムのイオン化の式
Na → Na+ + e-
問2 放電時のS極の反応を電子を含むイオン反応式で表せ。
<答え>
正極(S極) ( ? )
負極(Na極) Na → Na+ + e- ×2
___________________
全体 2Na + xS ⇆ Na2Sx
上記の関係より正極の式は
xS + 2e- → Sx2-
問3 放電により,S極のNa2Sxの組成が,Na2S5からNa2S2に変化したとする。このとき,硫黄原子1molあたりの放電電気量は何クーロンになるか。
<答え>
硫黄原子については,S52-→S22-と考えられる。
半反応式を完成させると,
2S52- + 6e- → 5S22-
となり,左辺に着目すると硫黄原子10molで6molの電子を受け取ることが分かる。よって,硫黄原子1molあたりは0.6molとなり,放電電気量は
0.6×96500 = 57900C ≒ 5.8×104C
となる。
どうだったでしょうか?
今後も,化学の入試問題に関する情報をアップしていくので,よろしくお願いします!!