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丸暗記からの脱出!【第6回 理論化学 オキソ酸の構造式】

こんにちは、化学マスターです。

 

今回はオキソ酸の構造式の書き方を解説したいと思います。

みなさんは、『ニトロ基の-NO2やスルホ基の-SO3Hの官能基を丸暗記の状態になっていませんか?』

これらは、硝酸や硫酸を由来とする構造であるため、元の硝酸や硫酸といったオキソ酸の構造式を知ることで、官能基の構造式をはっきりと理解することができます。

 

また、オキソ酸の構造を理解することで、ニトロ化やスルホン化についての理解が深まります。そして、難関大で出題されるケースが多い、DNAの単元のリン酸エステルの構造式なども簡単に書けるようになります!

ぜひ最後までご覧ください!

 

それでは早速行ってみましょう!

 

 

<オキソ酸の種類>

そもそもオキソ酸とは、酸素を含む酸のことで、中心となる元素が

第2周期では炭素、窒素があり、第3周期ではケイ素、リン、硫黄、塩素が挙げられます。

また、これらの元素の最高酸化数のオキソ酸を考えると、

炭酸H2CO3、硝酸HNO3 、ケイ酸H2SiO3

リン酸H3PO4、硫酸H2SO4、過塩素酸HClO4

があげらます。

これらのオキソ酸の構造式について考えていきましょう!

 

<構造式を書く手順1>

例として、第3周期の硫黄を中心としたオキソ酸の『硫酸』の構造式について考えてみます。

手順は以下の通りです。

 

硫酸 H2SO4

①中心原子に原子価の数だけヒドロキシ基(-OH)をつける。

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②非共有電子対があれば、酸素原子を配位させる。

※酸素原子の価電子を寄せて、電子が入っていない部分を作り、配位させる!

●:硫黄原子の価電子 ○:酸素原子の価電子

→:配位結合

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これで完成!

あと、このパターンでできるのが、

リン酸 H3PO4f:id:kagakumaster123:20211102235003p:plain

過塩素酸 HClO4 f:id:kagakumaster123:20211102235106p:plain

手順どおりに処理すれば、簡単にオキソ酸の構造式が書けますね!

 

<構造式を書く手順2>

次に、第2周期の元素を中心に持ってきた場合のオキソ酸の構造式について考えてみましょう。例として、『硝酸』について考えてみます。

手順は上記の①・②については同じです。

 

硝酸 HNO3

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手順①・②を行うと、このようになります。

しかしこれでは、まだ硝酸HNO3は完成していません。

 

最後に手順③として、

『中心の原子のサイズが、先ほどの第3周期の元素よりも小さいため、ヒドロキシ基同士の物理的な距離が、かなり近くなることになります』

その結果、安定な化合物にするためには、2つのヒドロキシ基の間から水を抜き取ることで、安定な物質にすることができます。

操作は以下の通りです。

f:id:kagakumaster123:20211103054621p:plain

これで完成です!

 

あと、このパターンでできるのが、

炭酸 H2CO3

f:id:kagakumaster123:20211103055323p:plain

炭素は、手が4本であるため、ヒドロキシ基を4つ付けそこから水を抜き取ると炭酸の完成です。

しかし、上記の③のルールを考えると、残った二つのヒドロキシ基同士も近いことになるため、炭酸の場合はさらに水の抜き取りが進むことになります。その結果、次のようになります。

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このことから、炭酸が不安定な酸であり、二酸化炭素と水に分解されやすいという性質も納得することができますね!

 

一方、ケイ素を中心とした場合は、水の抜き取りは一段階で止まり、ケイ酸が生じます。

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そして、この水の抜き取りが分子間で進むことで、シリカゲル SiO2・nH2O を生成することになります。

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オキソ酸の構造を理解することで、今までなんとなく覚えてきた炭酸の分解反応やシリカゲルの化学式が、同じルールに基づいて説明できるようになりましたね!

 

それでは、オキソ酸の構造式を理解できたら、次はニトロ基やスルホ基の構造を確認しましょう!

 

<ニトロ化>

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<スルホン化>

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オキソ酸から考えられると、ニトロ基やスルホ基の構造が、はっきりと分かりますね!

また、窒素と硫黄が電気陰性度の大きな酸素と結合していることから、これらの官能基が電子吸引性を持つことの理解にもつながります。他にも、スルホ基には、硫酸由来の水素原子が残っているため、この水素原子が強酸として作用するということも理解できます。

 

最後に、応用編として無機酸エステルについても考えていきましょう!

一般に、エステルといえば、『カルボン酸(有機酸)とアルコール』から生じる物質と考えている人が多いのではないでしょうか?

ここでは、エステルの見方を拡げるために、次のような関係を理解しましょう!

 

カルボン酸 + アルコール → エステル

無機酸 + アルコール → エステル

 

具体例としては、

酢酸 + メタノール

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硝酸 + メタノール

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この二つの式が、

エステル化のルールである

①酸のヒドロキシ基(OH)

②アルコールの水素原子(H)

から脱水する

という同じルールで書くことができること、そして、どちらも生成物の分類はエステルであることを理解しておきましょう!!

 

このエステル化が理解できれば、次のトリニトログリセリンの生成がエステル化であることや、

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※丸暗記している人は、トリニトログリセリンのアルコール由来の酸素原子を忘れる人が非常に多いです!

 

その他、リン酸エステル、トリニトロセルロースの生成過程についても理解できるようになります!

 

オキソ酸の構造から、様々な内容の理解が深まることは理解できましたか?

オキソ酸の構造をしっかり理解しておくことは、物質の性質や、様々な反応式の丸暗記からの脱出につながります。

ぜひ理解しておきましょう!

 

 

今回の内容は以上です!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

この記事を通して、みなさんの受験化学の『丸暗記からの脱出!』が少しでも進めば嬉しいです。

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