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丸暗記からの脱出!【第5回 理論化学 本当の酸化数】

こんにちは、化学マスターです。

 

単体は『0』、化合物中の水素は『+1』、化合物中の酸素は『-2』、ただし過酸化水素の場合は特別に『-1』そんな風に丸暗記にしていませんか?

正直、自分もこの丸暗記になっていました。

ですが、この丸暗記では、酸化数を有効に利用することができていないのです。

 

 

今回は、この酸化数について、少し深く解説することで、酸化還元の見方を根本的に変えていきたいと思います。

それでは内容に行きましょう!

 

 

例えば、塩化水素の酸化数について考えたいと思います。

塩化水素はHClですから、水素の酸化数は+1であり、合計して0にする必要があるため、塩素の酸化数は-1と分かる。

これが基本ですね!

 

では、この『+1』はどこから来たのか。

ルールだからではありません。

 

 そもそも酸化数とは、基準の状態(原子)から電子をいくつ受け取ったか(負の値)、または失ったのか(正の値)を示した数値のことです。

 この時、イオン性の物質についは、イオンの電荷のことを指しますが、分子性の物質については、化合物中の共有電子対を、電気陰性度が大きい方の原子が保有していると考えた場合のイオンの電荷となります。

 

分かりにくいので、具体例として先ほどの塩化水素で考えると、電気陰性度の値はCl>Hであるため、共有電子対は塩素が保有していることになります。

その結果、

電子の保有状況は下図のようになります。

f:id:kagakumaster123:20211019001624p:plain

水素は1価の陽イオンと考えられるため、

酸化数は+1

塩素は1価の陰イオンと考えられるため、

酸化数は-1

となります。

 

では別の物質でも考えてみましょう。

 

 

 

例題1 二酸化炭素

電気陰性度の値はO>Cであるため、共有電子対は酸素が保有していることになり、電子の保有状況は下図のようになります。

f:id:kagakumaster123:20211019002250p:plain

炭素は4個の電子を失い、4価の陽イオン 

 → 酸化数は+4

酸素はそれぞれ2個の電子を受け取り、2価の陰イオン

 → 酸化数は-2  となります。

 

 

 

例題2 塩素

電気陰性度の値はCl=Clであるため、共有電子対の偏りはなく、この場合は1つずつ保有することになます。

f:id:kagakumaster123:20211019002959j:plain

塩素は7個の価電子をもち、その数に変化がないため、酸化数は0となります。

 

これが理解できると、特殊な例として処理されてきた過酸化水素の酸素が、-1になる事も納得できますね!

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これらの内容を理解できたら、次の問題にもチャレンジしてみましょう!

 

問 酢酸CH3COOH 下線を引いた炭素原子の酸化数を求めよ。

 

教科書の考え方で行くと、

水素が4つで水素の酸化数の合計は+4

酸素は2つで酸素の酸化数の合計は-4

では炭素は??

 

 

求められませんね。

そこで出てくるのが今回の電気陰性度を用いた考え方です。

まず、酢酸の電子式は以下のようになります。

f:id:kagakumaster123:20211019004426p:plain

ここで、

電気陰性度の値はO>C>Hとなるため、電子の保有状況は次の通りになります。

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この結果から、

水素原子は全て+1

酸素原子は全て-2

炭素原子は

左側が-3、右側が+3となります。

※分子全体の合計値が0になっていることも確認しておきましょう!

 

 

このように、電気陰性度の大小から酸化数を決められるようになると、『酸化数とは、電子の保有数の基準値(原子の時)からのズレ』を表していると言うことがよく分かります。

 

さらに、このことを応用すると、酸化数の最大・最小についても考えられるようになります。

 

硫黄は、電子配置はK2L8M6であるため、

酸化数の

最大値は、価電子6個すべて失ったときの+6

最小値は、2個の電子を受け取ったときの-2

つまり、希ガスになるまで

減らした場合の電荷 → 最大酸化数

増やした場合の電荷 → 最小酸化数

となっていることが分かります。

これを一覧にまとめると次のようになります。

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 この一覧から、例えば硫黄について考えてみると、硫化水素では最低酸化数をとっており、化学反応によって酸化数を上げることしかできないため、酸化還元反応においては『必ず還元剤として働く』ことがわかります。

 また、硫酸では最高酸化数をとっており、酸化数を下げるとこしかできないため『必ず酸化剤として働く』ことがわかります。

 ただし、硫酸酸性条件をつくりだすために使用している場合などは、酸化数が変化せず、どちらとしても働いていません。このことも忘れないようにしましょう。

 

 他にも、過酸化水素や二酸化硫黄が、酸化剤・還元剤どちらの働きもすることで有名ですが、これは増やすことも、減らすこともできる中途半端な酸化数をとっていることが原因だということも分かります。

 抜けがちな知識でいうと、塩化水素が還元剤として働くということもこの一覧から確認できます。うまく使っていきましょう!

 

 

どうでしたか?

酸化数の理解は進みましたか?

酸化数に対しての考え方が変われば、反応式の見方も変わります。

酸化還元をしっかり理解しておくことは、無機化学有機化学の深い理解と丸暗記からの脱出につながります。

ぜひ理解しておきましょう!

 

 

今回の内容は以上です!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

この記事を通して、みなさんの受験化学の『丸暗記からの脱出!』が少しでも進めば嬉しいです。

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