丸暗記からの脱出!【第3回 無機化学 アルミニウムの錯イオン化】
こんにちは、化学マスターです。
化学の勉強していると、化学反応式の丸暗記に苦労する場面がありませんか?
ここでは、受験生の皆さんが暗記に少し苦労するのではないかと思われる反応式について、効率の良い覚え方を紹介していきたいと思います。
今回は、アルミニウムの錯イオン化の反応についてです。
かなり受験化学の中でも有数の複雑な式で、苦労していませんか?
この反応式も、第1・2回同様、多段階で進む反応としてとらえると、かなり効率よく書けるようになります。ぜひ参考にしてみてください!
それではいってみましょう!
<アルミニウムの単体>
アルミニウムの錯イオン化は、『アルミニウムに過剰の水酸化ナトリウム水溶液』で反応式は次の通りです。
Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2
複雑で何が何だか分かりませんね。
それでは多段階に分解してみましょう!
この反応は分解すると、
『①水酸化物の形成
→②錯イオン形成』
の順に進みます!
では、①水酸化物の形成から見ていきましょう
。
金属の単体が水に溶けて水酸化物になる反応。これはイオン化傾向の高い金属で起こり、反応式は次の通りです。
(冷水)2K + 2H2O → 2KOH + H2
(冷水)Ca + 2H2O → Ca(OH)2 + H2
(冷水)2Na + 2H2O → 2NaOH + H2
(熱水)Mg + 2H2O → Mg(OH)2 + H2
ただし、実際にはアルミニウムは、高温水蒸気としか反応しません。
(しかも、生成物は酸化物です)
ここでは、反応式を導出するために、水酸化ナトリウムのような強塩基中では、上記の金属と同様の反応がおこり、水酸化物ができて、水素が発生すると考えてください。
すると反応式は、次のようになります。
2Al + 6H2O → 2Al(OH)3 + 3H2・・・①
※実際にアルミニウムは水と反応することはないので、共通テストなどの正誤問題では 注意してください。
次に、②錯イオン形成についてです。
①の反応によって生じたAl(OH)3は白色ゲル状の沈殿物であり、これが溶ける行程が②となります。
反応式は次の通りです。
Al(OH)3 + NaOH → Na[Al(OH)4]・・・②
アルミニウムは、テトラ型の錯イオンとなり溶解することは、最低限の知識として押さえておきましょう。
これら①・②の反応式を足し合わせてみましょう。
中間生成物である水酸化アルミニウムを削除する必要があるため、②の式を2倍して足すと、青い文字が消去されます。
2Al + 6H2O → 2Al(OH)3 + 3H2・・①
2Al(OH)3 + 2NaOH → 2Na[Al(OH)4]・・②×2
2Al +6H2O + 2NaOH → 2Na[Al(OH)4] + 3H2
これで『アルミニウムに過剰の水酸化ナトリウム水溶液』完成です!
アルミニウムの単体での反応式を書けるようになると、それを利用して酸化アルミニウムの式も書けるようになります。
↓↓↓
<酸化アルミニウム>
操作は同じです!!
では実際に見ていきましょう。
①水酸化物の形成です。
Al2O3 + 3H2O → 2Al(OH)3・・・①
次に②錯イオン形成です。
Al(OH)3 + NaOH → Na[Al(OH)4]・・・②
これら①・②の反応式を足し合わせてみましょう。
中間生成物である水酸化アルミニウムを削除する必要があるため、②の式を2倍して足すと、青い文字が消去されます。
Al2O3 + 3H2O → 2Al(OH)3・・・①
2Al(OH)3 + 2NaOH → 2Na[Al(OH)4]・・・②×2
Al2O3 +3H2O + 2NaOH → 2Na[Al(OH)4]
これで『酸化アルミニウムに過剰の水酸化ナトリウム水溶液』完成です!
※共通テストの正誤対策としては、酸化物からの場合は、水素の発生がないことも押さえておきましょう!
それでは、ここで他の元素でも試してみましょう!!
<問題>
(考えた後、下で答えを確認しましょう!)
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
(1)
Zn + 2H2O → Zn(OH)2 + H2・・①
Zn(OH)2 + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4]・・②
Zn(OH)2 + 2H2O + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4] + H2
(2)
ZnO + H2O → Zn(OH)2・・①
Zn(OH)2 + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4]・・②
Zn(OH)2 + H2O + 2NaOH → Na2[Zn(OH)4]
導出できましたか?
錯イオン形成反応は、非常に複雑な反応式で、覚えるのに苦労すると思いますが、
『①水酸化物の形成
→②錯イオン形成』
の行程で導出してくると考えれば少し負担が軽減できます。
入試問題で出題されるのは、アルミニウムと亜鉛がほとんどですので、まずこの二つの元素の錯イオン化をマスターしておきましょう!
今回の内容は以上です!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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丸暗記からの脱出!【第2回 無機化学 さらし粉の利用】
こんにちは、化学マスターです。
化学の勉強していると、化学反応式の丸暗記に苦労する場面がありませんか?
ここでは、受験生の皆さんが暗記に少し苦労するのではないかと思われる反応式について、効率の良い覚え方を紹介していきたいと思います。
前回はさらし粉の製法でしたが、今回はさらし粉を利用した反応として塩素の発生についてです!
丸暗記からの脱出!【第1回 さらし粉の生成】 - 化学マスターのハイレベル豆知識💊
<さらし粉の利用>
塩素の発生方法は、『さらし粉に塩酸』で反応式は次の通りです。
CaCl(ClO)・H2O + HCl → CaCl2 + 2H2O + Cl2
覚えにくい・・・
実はこの反応式は、多段階で反応しているので難しく感じているのです。
では、この反応式の分解して考えてみましょう。
まずは結論ですが、反応は
『①弱酸遊離反応
→②平衡の移動』
の順に進みます!
では、①弱酸遊離反応から見ていきましょう。
さらし粉は第1回の②中和でも説明した通り、水酸化カルシウムと塩化水素・次亜塩素酸の復塩です。そして、この反応で重要なことは、次亜塩素酸が弱酸であるということです。そのため、強酸の塩酸によって遊離させられることになります。
反応式は次の通りです。
CaCl(ClO)・H2O + HCl → CaCl2 + HClO + H2O・・①
さらし粉に塩酸を加えると、まず弱酸遊離反応がおこり、強酸強塩基の塩である塩化カルシウムが生じ、次亜塩素酸が遊離します。
次に②平衡の移動についてです。
①の反応によって次亜塩素酸が生じましたが、この次亜塩素酸と初めに加えた塩酸によって、さらに反応が進行します。
反応式は次の通りです。
HClO + HCl ⇆ Cl2 + H2O・・・②
※化学平衡の反応であることも押さえておきましょう!
塩素の溶解の反応式の逆反応ですね。
これは、過剰量の塩酸が存在するのであれば、ルシャトリエの原理から平衡は右に移動するということが理解できます。
これら①・②の反応式を足し合わせると青い文字が消去されます。
CaCl(ClO)・H2O + HCl → CaCl2 + HClO + H2O・・①
HClO + HCl ⇆ Cl2 + H2O・・・②
CaCl(ClO) + 2HCl → CaCl2 + Cl2+ H2O
これでさらし粉からの『塩素の発生』完成です!
さらし粉からの反応式を書けるようになると、それを利用して高度さらし粉からの反応式も書けるようになります。
↓↓↓
<高度さらし粉の利用>
操作は同じです!!ただし・・・
『塩化水素の量は倍!』
これだけは注意しておきましょう!
では具体的に見ていきましょう。
①弱酸遊離反応です。
Ca(ClO)2 + 2HCl → CaCl2 + 2HClO・・・①
次に②平衡の移動です。さらし粉の時の2倍の式ですね。
2HClO + 2HCl ⇆ 2Cl2 + 2H2O・・・②
これら①・②を足し合わせると青い文字が消去されます。
Ca(ClO)2 + 2HCl → CaCl2 + 2HClO・・・①
2HClO + 2HCl ⇆ 2Cl2 + 2H2O・・・②
Ca(ClO)2 +4HCl → CaCl2 + 2Cl2 + 2H2O
これで高度さらし粉からの『塩素の発生』完成です!
第1回と今回とで通して言えることは、
Cl2 + H2O ⇆ HClO + HCl
この反応式を覚えておくことが、有効であるということです!
さらし粉関連の式は、ぱっと見覚え辛い反応式が多いですよね。
上記の式を利用して効率よく導き出せるように練習しておきましょう!
多段階で説明ができる反応式は、他にもたくさんあります。
今後、扱っていけたらと思っています。
今回の内容は以上です!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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丸暗記からの脱出!【第1回 さらし粉の生成】 - 化学マスターのハイレベル豆知識💊
丸暗記からの脱出!【第1回 無機化学 さらし粉の生成】
こんにちは、化学マスターです。
化学の勉強していると、化学反応式の丸暗記に苦労する場面がありませんか?
ここでは、受験生の皆さんが暗記に少し苦労するのではないかと思われる反応式について、効率の良い覚え方を紹介していきたいと思います。
今回は、さらし粉生成の反応式についてです!
<さらし粉の生成>
さらし粉の製法は、『石灰水に塩素を加える』で反応式は次の通りです。
Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O
覚えにくい・・・
実はこの反応式は、多段階で反応しているので難しく感じているのです。
では、この反応式の分解して考えてみましょう。
まず結論ですが、反応は
『①溶解→②中和』の順に進みます!
では、①溶解から見ていきましょう。
塩素は中学校の理科でも水に溶けやすい気体として習います。高校化学の視点から見ると、無極性分子なのになぜ??となりますよね。
この水によく溶ける性質は、化学反応によるものです。
反応式は次の通りです。
Cl2 + H2O ⇆ HCl + HClO・・・①
※化学平衡の反応であることも押さえておきましょう!
石灰水に塩素を加えた場合、水酸化カルシウムと塩素が直接反応するわけではなく、まずこの反応によって、塩素は塩化水素と次亜塩素酸に変化します。この反応式は、電気分解で塩素が発生した場合、電極付近が酸性になることを説明する際にも使われます。この式については、最低限の暗記として覚えてしましましょう。
次に②中和についてです。
①の反応によって生じた塩化水素と次亜塩素酸は、石灰水中の水酸化カルシウムと即座に中和反応がおこります。
反応式は次の通りです。
Ca(OH)2 + HCl + HClO → CaCl(ClO) + 2H2O・・・②
※さらし粉が、塩化カルシウムと次亜塩素酸カルシウムの復塩であることも押さえておきましょう!
これら①・②の反応式を足し合わせると青い文字が消去されます。
このとき、残った水を水和水にするのを忘れないでください。
Cl2 + H2O ⇆ HCl + HClO ・・・①
Ca(OH)2 + HCl + HClO → CaCl(ClO) + 2H2O・・・②
Ca(OH)2 + Cl2 → CaCl(ClO)・H2O
これで『さらし粉の生成反応』完成です!
余談になりますが、①の反応は化学平衡の反応ですが、生じた酸の中和が即座に行われるため、ルシャトリエの原理より、常に平衡は右へ移動することになり、全体の式では右向き矢印のみとなります。
さらし粉生成の反応式をかけるようになると、それを利用して、高度さらし粉生成の反応式も書けるようになります。
↓↓↓
<高度さらし粉の生成>
操作は同じです!ただし・・・
『塩素の量を倍にする!』
これだけです。
では具体的に見ていきましょう。
①溶解では、すべての係数を2倍にします。
2Cl2 + 2H2O ⇆ 2HCl + 2HClO・・・①×2
次に②中和です。
さらし粉では、塩化水素と次亜塩素酸の両方での中和を行いましたが、こちらでは、次亜塩素酸のみで、水酸化カルシウムを中和します。
Ca(OH)2 + 2HClO → Ca(ClO)2 + 2H2O・・・②
これら①・②の反応式を足し合わせると青い文字が消去されます。
2Cl2 + 2H2O ⇆ 2HCl + 2HClO・・・①×2
Ca(OH)2 + 2HClO → Ca(ClO)2 + 2H2O・・・②
2Cl2 + Ca(OH)2 → Ca(ClO)2 + 2HCl
これで『高度さらし粉の生成反応』完成です!
結論としては、さらし粉、高度さらし粉の反応式の覚え方は、
『まず①の塩素の溶解の反応式を覚えること!』
これにつきます。
最後に、この発想を利用して、過去京大模試に出題された事例を紹介しておきます。
<問題>
水酸化ナトリウム水溶液に塩素を加えた時の化学反応式を答えよ。
<考えた後、下で答えを確認しましょう!>
↓
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↓
↓
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↓
↓
↓
↓
↓
Cl2 + H2O ⇆ HCl + HClO
NaOH + HCl → NaCl + H2O
NaOH + HClO → NaClO + H2O
2NaOH + Cl2 → NaCl + NaClO +H2O
解けましたか??
この反応式は、イオン交換膜法で水酸化ナトリウムを製造する際に、塩素と水酸化ナトリウムの極を膜で仕切らなければならない理由を説明するときにも利用できます。押さえておきましょう!
今回の内容は以上です!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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